星新一に、何を捨てても飲み込んでくれる穴の話があります。あの穴が家にあればいいのに、と思ったことのある人は、たぶん少なくない。
ゴミをまとめる手間、捨てに出るわずらわしさ、分別。生活から出てくる汚さに、どうすれば真っ向から向き合わずに済むか。
つまり、ゴミ箱の話をしたい。
2024年7月26日、私はZitA SQUARE(ジータスクエア)という自動開閉ゴミ箱を買いました。本体27,800円に消臭剤1,980円を足して、29,780円。予約販売で、届いたのは8月末でした。

2年使いました。結論から言うと、うちには合いませんでした。
なぜ買ったのか
それまで使っていたのは、プラスチックのゴミ箱でした。ペダル式の蓋が壊れて、開きっぱなしになった。台所が臭くなりました。
次は頑丈なものがいい、と思いました。
ちょうどその頃、ZitAの広告がInstagramに流れてきました。手をかざすと蓋がスライドして開く。ゴミ箱に見えないデザイン。ニオイが漏れない。よくできた広告でした。
それと、当時は家を建てたばかりで、正直に言うと金銭感覚が少しおかしくなっていました。いいモノを買えば生活の質が上がる、と信じていた時期です。この買い物については読みを外しました。
なお、うちの台所は業務用キッチンです。3人家族で使っていて、ゴミの量は多いほうだと思います。同じ製品でも条件が違えば結論は変わるので、先に書いておきます。
良かったところ
先に書いておきますが、悪い製品ではありません。
野菜のくずを手にまとめ、両手がふさがっているときにセンサーで蓋が開く。手をかざすだけで開くのは、自分で開けるよりは実際に便利です。
見た目も良い。ゴミ箱に見えないというのはまあそうで、台所に置いてあっても浮かない。
ニオイも、少なくとも最初のうちは気になりませんでした。横にスライドするシャッター式の蓋で、開いている時間も1〜5秒で調整できる。設計思想は分かります。
2年経って、また台所が臭い|シャッターが途中で止まる
前のゴミ箱が壊れて臭くなったから買い替えたのに、2年後に同じことが起きました。
原因は違います。壊れて開きっぱなしになったのではなく、シャッターが途中で止まって閉じなくなった。
シャッターの隙間にゴミのかけらが溜まり、内側に巻き込まれて、少しずつ動きが重くなっていく。そして、あるとき止まる。厄介なのは、それが見えない場所で進むことです。前のゴミ箱は壊れたら見れば分かりました。こちらは、ニオイが出てから気づきます。
揺すったり、刷毛で払ったりしてみましたが、こびりついた汚れまでは取れません。取るには分解するしかない。ドライバーを持ち出さないと掃除できないゴミ箱でした。
何が挟まっていたか、止まったときにうちでやっている対処は、別の記事にまとめました。
→ ZitA SQUAREの蓋が途中で止まる・閉まらない原因|2年使ってわかったこと

ZitA SQUAREのゴミ袋を替える手順
一番ストレスだったのは、これです。
ZitA SQUAREには、ゴミ袋を固定する「リング」という枠が付いています。袋の口をリングに通して、リングごと本体の内側に落とし込む。そうすると袋の口が挟まって、外から袋が見えなくなります。ゴミ箱をゴミ箱に見せないための仕組みです。
袋を替えるときは、こうなります。
- リングを外す。汁気が伝ってくる場所なので汚れます。カビをまとっていることもある。毎回、素手で持ち上げます
- 袋を抜く。このとき、中の割り箸や段ボールが内側から突き出していると、リングを載せる突起に引っかかって破けます
- 新しい袋をリングに通す。四辺に均等に回さないと収まりません
- リングを水平に落とし込む
手をかざすだけで開くゴミ箱の、袋を替える手順です。
前のゴミ箱は、蓋を開けて袋を持ち上げるだけでした。
メーカーに問い合わせました
袋を抜く時に破けてゴミ箱内でゴミをぶちまけるといったことが建て続いて、メーカーのフォームから問い合わせました。何を書いたかは覚えていませんが、かなり怒っていたことは覚えています。
後日、メールで返信が来ました。丁寧な回答でした。袋を真上に引き上げず、前後に小さく揺らしながらゆっくり持ち上げるように、という案内。密着して真空状態になっているのが原因で、隙間から空気が入れば摩擦が減る、という説明でした。そして回答の中に、設計上の課題として受け止めている、という趣旨の一文がありました。
対応は誠実だったと思います。
ただ、案内された方法は、その前から当然やっていたことでした。そしてそもそも、破れているのは真空のせいではありません。ゴミ袋内の硬いものが突起に引っかかっているせいです。点で当たっている力は、揺らしても逃げません。
割り箸が入っていると破れる。段ボールが入っていると破れる。つまり、捨てていいものとそうでないものがある。
ゴミ箱が、捨てるモノを選ぶ時代になったのだろうか。
今はこう使っています
リングに袋の口を通すのをやめました。袋の口を外に出して、リングは一応の支え程度に使っています。
見た目は悪くなりました。でも取り付けは早い。ファッションは我慢という人もいますが、週2回のゴミ捨てに我慢は要らない。
ただ、抜くときには相変わらず突起に注意が要ります。10回に1回は袋が破けます。見た目を諦めても、破れる問題は残ったままでした。
そのほかに困ったこと
2回目を捨てる前に閉まる。野菜の切りくずをまとめて捨てるとき、一度で入りきらずに二度目を捨てようとすると、もう閉じている。
手で開けられない。シャッターを手で動かすのは故障の原因になるため控えるよう、公式に案内されています。電池が切れたら、口を開きっぱなしにしておくか、開けにくい箱になります。
単3電池が4本、または8本。蓋を開け閉めするだけの機能に、この本数です。年間の電池代は400円程度なので、金額の問題ではありません。ただ、薬局のレジで単3を8本カゴに入れるとき、ちょっと手が止まります。今日じゃなくていいや。
消臭剤は買わなくなりました。半年ごとの交換が推奨されていますが、効果がよく分からなかったのと、シャッターが詰まったときに揺すったら、汚れたフィルタがぽろっと落ちてきて、それきりです。
見せないための構造が、汚れる
2年目に、分解しました。掃除のためです。シャッターの内側に巻き込まれたゴミが、揺すっても刷毛でも取れなかったので。
開けてみて、だんだん腹が立ってきました。

この製品の主な機能は、どれも見せないためのものです。蓋はニオイを閉じ込めるために密閉されている。リングは袋を隠すために挟み込まれている。シャッターは開口部を塞ぐために可動する。
そして、そのどれもが当然汚れる場所でした。
蓋の内側は、生ゴミから立ち上る水分と臭気を最初に受けます。ところがそこにモーターと基板と配線が入っているので、水をかけられない。公式にも、蓋は水洗いできないと明記されています。

ニオイ対策を売りにした製品の、ニオイを最も吸う部分が、手入れできない構造になっている。
これは不具合ではなく、自動開閉である以上避けられない帰結だと思います。駆動部を蓋に置くなら、そうなる。
(分解して見えたもの、内部の状態については、別の記事に書きます)
公式の手入れ方法は、現実の汚れに届いていない
公式が案内している手入れは、拭き取りです。蓋は水洗いできず、薄めた中性洗剤を含ませた布で拭く。アルコールや次亜塩素酸は変色や破損の原因になるため使わない。シャッターの進行方向に沿って拭くのも、故障につながるため避ける。
案内としては理解できます。樹脂とアルミの複合物で、中に基板とモーターが入っているなら、こう書くしかない。
ただ、これは拭けば取れる汚れを前提にしています。
実際に溜まるのは、そうではありませんでした。シャッターの内側に巻き込まれたかけら。リングの隙間を伝った汁気。ハウジングの奥の、指もウエスも入らない幅の溝。布が届かない場所に、拭いても落ちない固さで固着して育っていきます。
ゴミ箱は、汚れるのが前提の道具です。その前提に対して、拭き取りだけで足りるという想定が、2年使った実感とかみ合いませんでした。
気になったのは、旧モデルのZitA CIRCLEです。あちらのFAQには「蓋部分は工具なしで分解できるため簡単に掃除できる」と書かれています。蓋が途中で止まるときは「羽を取り外して手入れすると効果的」とも案内されている。
SQUAREには、どちらの記載もありません。そして実物は、ドライバーを使わないと開きませんでした。
説明書を読み返しながら、では自分がいまウェットティッシュで拭いているこの溝は、どうするのが正解だったんだろう、と思いました。もしこの記事をメーカーの方が読んでいるなら、教えてほしいくらい。
(2026年9月時点で確認した内容です)
ZitA SQUAREが向いている人・向かない人
考えました。かなり考えたのですが、すすめられる人が思い浮かびませんでした。
条件を並べることはできます。
- 生ゴミを捨てない
- 袋を替える頻度が少ない
- 紙類など、柔らかいものが中心
事務所や会議室のような場所です。家庭なら、台所以外の部屋。ただ、台所で使うために買ったので、うちの場合は該当しませんでした。
そして、それなら安い自動開閉ゴミ箱でも足りるのではないか、と考え始めると、すすめる理由が作れなくなりました。
合わない人のほうは、はっきりしています。
- ゴミ袋を週に2回以上替える
- 割り箸、段ボールなど硬いものが混ざる
- 一度にまとめて捨てることが多い
- 見た目より手数の少なさを優先する
そして、私と同じ理由で買おうとしている人には、たぶん合いません。前のゴミ箱が壊れて、家を建てたばかりで、広告を見て良さそうに思った人です。その3つが揃っているとき、この製品は問題を解決しません。
買う前に、一番頻度の低い作業を想像する
広告を見ていたときの自分に言いたいことが、ひとつだけあります。
映っていたのは、手をかざすと蓋が開く場面だけでした。袋を替える場面は映っていません。当然です。売るための映像なので。
捨てる動作は1日に何度もあり、袋を替えるのは数日に一度。回数の多いほうを楽にして、少ないほうに負荷を寄せた設計、と言えます。合理的ではある。ただ、寄せた先の負荷が不快と失敗を伴うので、体感では割に合いませんでした。つまり、ゴミを放り込むよりも捨てる時の方が不快で、そこには届かない商品であるということです。
広告に映らない動作のほうが、長く付き合うことになる。次に何か買うときは、そこを想像してから決めようと思います。
この記事に広告を置かなかった理由
このブログは広告収入を目的に運営しています。本来なら、ここに購入リンクを置くところです。
置くことも考えました。ただ、どういう人にならすすめられるかを考えてみて、思いつきませんでした。すすめられない商品を紹介するのは違うと思ったので、リンクは置いていません。
向き合わずに済ませたかった。そのために3万円近くを払いました。
テクノロジーで面倒を減らしたつもりが、別の形で請求されていた。手をかざす動作が楽になったぶん、袋を替えるたびにカビの生えたリングを素手で外しています。
見ずに済ませていたのは、2年分でした。毎日少しずつ見ていれば、一度に見ることはなかったのかもしれない。ただ、毎日見なくて済むように買ったゴミ箱でもあります。
面倒は、面倒のまま置いておいてもよかった。そう思い知らされた2年でした。
つまり、ゴミ箱の話でした。

